かべメモ

いわゆるメモってやつです

らすとふらっぱーのこと

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とても思い当たるところがあったみたいで、観劇後しばらく怖くてちょっと感想を考えるのを避けてたとこがありました。そのへんとかもちょっと文字で書いてみようと思います。

 (「THE LAST FLAPPER」とてもざっくりとした概要)

きりやさん初の一人芝居。スコット・フィッツジェラルドの妻だったゼルダの、精神病院での最後の1日の午後、先生が不在、自分で勝手に診療を始める。カウントダウンしながら心の深いところをさらけ出すように追っていく。終わったときに残っているものとは。

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私がこの作品で「辛いなぁ怖いなぁ」と思ったポイントはゼルダの狂気とか波乱万丈な人生とかではなくて、治療として心のうちを話すという点だった。作品がちゃんと出来ていたからこそ余計なところで感情移入してしまったともいえる。

幸い大事なかったしゼルダとは違う病気ではあったけれども、私もメンタル系のお医者さんのお世話になったことがある。治療を始める上で一番しんどかったのが、「なぜ医者の世話にならないといけないほどの精神状態になっているのか」を医師やカウンセラーとの対話のなかで探ることだった。これができないのでなかなか医者にかかるまでちょっと時間がかかった。

人は辛いことはなるべく思い出したくない。できたら適当に蓋をして土とかかけて見えないようにして過ごしたいものだ。しかしお医者さんのお世話になるくらいなので穴が大きすぎて先生に説明する必要があると(この例えは自分の想像にすぎません)。そのときのことを思い出してしまって、必要以上に「ああ、ゼルダ辛いねぇ、それえぐり出さないといけないの本当に辛いよねぇ」って気分が盛り上がったような気がする。まるで隣で話を聴いているような気分だった。(健康だったら居酒屋で愚痴を聞いてるであろうシチュエーション)

感情ゲージが本筋と違う方向に振れ過ぎた原因をもう一つ考えるとすれば、私が不勉強で「フィッツジェラルドの妻ゼルダ」というものに対してほとんど先入観がないということだろうか。だから余計に一人の精神病院の患者として見てしまったのかもしれない。

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…とまあこればかりでは何のために観劇に行ったのか何かの治療を受けに行ったのかわからない文章になるので、もうちょっとゆるく楽しかったポイントとかも挙げたいです。

  • 歌い上げるんじゃない歌…きりやさんはミュージカルの人なのでどうしてもぐわーっとぶわーっとなりがち(そういうのを観客も期待しがち)なのですが、歌のワンフレーズをぼそぼそっとつぶやくようなところにグッときてしまいました。新鮮。
  • 突然の編み物…めっちゃ嫌そうにやってるのがまた。私は(編みもの好きなので)とても興奮しました。「ああっゼルダの指が乱暴に糸をかける…!」という謎の興奮。それにしてもあのスカスカのスカート(ダジャレではない)完成したとしてもどうやって着こなすつもりだったんでしょうね。
  • 絵も描く…あの袋の中身は編みもの一式だけじゃなかったんだぜ…!しかし描いたものが黒一色というのがちょっと怖い感じです。フライヤーに掲載されていたゼルダの描いた絵と似た骨格のある絵でした。
  • ダンスもする…ストプレと聞いていた割にはちょいちょい歌うし踊りもする公演でした。嬉しい。序盤にカルテを撒き散らしてその後片付けられることがないので、そんなにパタパタ踊ったりして大丈夫なのかとちょっとだけヒヤヒヤしました。
  • 小娘があらわれる感じ…回想は行ったり来たりしますが、10代くらいのゼルダが突然現れてすっごいかわいかったのですよ。机に腰掛けちゃって指輪のお返事を書いてるところが猛烈に好きです。幸せに満ち溢れすぎている…
  • 口紅…あのひと塗りのインパクトたるや。その印象もあり、先日家にある化粧品のラインナップを見直しました。
  • 髪型…劇中結構乱れるからなのか、肩につかないくらいでパーマの感じ(病人なのでちょっとくたびれてる)でした。似合ってるので病人役なのもったいないと思いました。
  • 色んな声…響いてくる声とか、病院のアナウンスとか、たぶんほぼ全部の声をきりやさんがやってたみたいで、「収録風景どんなだったんだろうな…」と想像が膨らみました。それからお母さんの声がなんかいいなーと。今後こういう役も見られることがあるといいなと思いました
  • セットのカーテンは一体何のために…と思ったら向こうに木(花が咲いている)やピアノ演奏のまきさんをそっと見せつつ隠しつつしていて綺麗だった。ところで若い時のゼルダの話を聞いてると「風と共に去りぬ」のスカーレットちゃんを思い出すとこもあるようなって時代とか調べないで書いてみる。
  • ドレスは…衣装は基本的に着たきりで、白衣を羽織ったりカーディガンを脱いだりはするものの、華やかなドレスは着る場面がありませんでした。なにせ回想ですから。その分は観劇後にプログラムを見たりだとかその年代風のドレスを画像検索したりとかオートクチュール展を見に行ったりとかしてそのへんはしのぎました。

(その他こまかいこと)

初日のあれはハプニングだと思うのだけど、飛び降りたときに後ろのカーテンが落ちてしまって、あのときは「そういう演出なのかな」と思ったけど次観た時はならなかったのでどうもそういうことではなかったらしい(でも結構好き)

幕間にセットを少しだけ片付けるスタッフの方が、たぶんカーテンの合間から机の下を整えて、机の上から他のとこを片付けてたんだと思うのだけど、突然机の裏からヌッと出てくるのでちょっとびっくりした。

 

 

 

*1:怖いなって思ったとこ(ベッドの下)