あみもの:はじめてのセーターらしきものができるまで
怒涛の観劇月間を経て物語の分解機能が限界に達し、アウトプットがなんにもできなくなったので、単純作業に没頭したくなって編み物をしていました。そのときの記録です。
着手時の編み物レベルは:表編みと裏編みだけならそこそこの量編めるけど袖のあるものは作ったことない永遠の初心者。サイズ調整の必要があまりない巻き物を作ることが多かった。単純作業に飽きやすい。
製作物の概要
前開き、長袖の上衣
参考パターン…Elizabeth Zimmermann "EPS"
毛糸…並太 約450〜500g
針…7号輪針(80cm、23cm(袖部分))
今回のプロジェクトの目標と背景
目標…袖のあるウェアを編んでみたい
実現したいこと一覧
- 編み物したい(棒針編み)
- なるべくたくさん編みたい
- 終わった後使えるものがいい
背景…1.在庫消費、2.着られるもの作りへのあこがれ
掃除をしていたら、昔セーター的なものに挑戦しようとして買ったとおぼしき糸が大量に出てきた。20玉くらい。「出てきた」とは言ったが前から存在は意識していて、しかしなかなかまとまって編んでみようという気力もなく、昨冬はその一部を使用してマフラーを編みかけて結局今秋まで放っといた(それはさすがに編み終えた)くらいだった。よく初心者にマフラー作るのをすすめるけど、単純な繰り返しって意外と飽きやすい私には地獄だと思う。
話がそれた。ちょっとしたものではなかなか減らない量の糸だ。最近思いの外サクサク編めるようになったので、そろそろ挑戦してもいいかもと挑戦を見当し始める。
また、私にとって編み物への憧れは着るものを作ることへの憧れでもあった。しかしこれまで何度か失敗もしている。恐れもある。
- 編む速度が全然追いつかない
- 編み図を自分が作りたいサイズに調節できない
速度はしかたのないことだ。編み物は何度も何度も同じ動作をする。セーター的なものはなおさらだ。たいてい飽きるか疲れ果てる。だいたい身頃の最初のゴム編みで「ダメだ…」とほどいて別の単純なものに変更していた。
しかし輪針というとても強力な戦力を得、フォーム改善にも取り組んだ結果、表編み裏編みだけなら(個人比で)かなりの回数続けられるようになった。というのがここ5・6年の話だ。輪針でベストも編んだこともある。
そしてサイズ調整。どんなに指示通りに作れたとしても、その後自分で使えなければ達成感は半減だ。それにはサイズの合う編み図を探してくるか、自分で指示書を書き換える必要があるのだが、たいていそんなに都合よいものは見つからないので後者を選ばざるをえない。
サイズ調整には「指示書の仕上がりサイズと各部の段数目数を変更する」ことと「自分の手から生成される編地のサイズ(ゲージ)に合わせて指示書を変更する」ことの2つがある。実際着るにあたって、市販のものより胴と腕を少し長めにしたものが欲しい。日本の編み図は糸とゲージが詳細に規定されているものが多いので指示通りに作れたらぴったりいくのだが、調整しようとするとかなり細かく変えていく必要がある。そしてゲージ。たくさん道具を揃えていたら針の号数を少し上下させて指示書通りにするらしいのだが、あいにく我が家にはそんなに細かいものはない。
私の人生の目標のひとつに、「自分で着るものを自分で作る」ことがある。それに近づくためには、今サイズ調整の練習ができたらいいなと思った。
作業の経過
作るものを決める
ベストは作ったことがあるのだが、肩が寒いためそれほど着用しなかった。袖が欲しい。現在の職場は都会のオフィスビルとは程遠いところにあるので冬場は寒く、薄くておしゃれなものでなく太い糸で編んだ暖かいものを作れるようになりたい。
しかし着るものにはサイズ調整がつきまとう。今回挑戦してみるが、もし変更できても、増減の指定が細やか過ぎても変更地点を覚えきれずに作業が遅くなる。なにより今回作業者(私)が「難しいことを考えない時間」を欲して編み物したがっているので、「あと何段編んだら減らし目かな…」ということをなるべく考えずに済むパターンを探したい。
また、ウェアものへの恐れのひとつに「とじ・はぎ」がある。袖と身頃を縫い合わせるような作業のことで、永遠の初心者である私は苦手としている。この作業には他に「パーツを合体させた時にちゃんと合うように作る」ことへのプレッシャーもある。「セーターの前身頃が後身頃より長くなっちゃったらどうしよう…」というイメージ。最近は「とじはぎなしで!」みたいな本やパターンも見かけるので、できたらとじはぎも少ないものだと気が楽だ。
ここまでのウダウダをまとめると
- シンプルなセーターまたはカーディガン状のもの、棒針
- 計算が楽そう
- 作業中の増減の指定が少ない
- とじ・はぎも少ない
こうなる。そんな都合の良いパターンを求めてさまよっていたところ、下記コラムにたどり着いた。
ここで紹介されているのは目数でなくパーセンテージなので、自分の編地のサイズを当てはめて計算したらよいかも。これで先ほどの条件の上3つが片付く。
また、とじはぎ問題に関しては、トップダウン方式を取りたいなとぼんやり考えた。上から下に編む方式のことだ。各部の大きさがわかるなら、逆でもできるかなと予想した。
そして一点ホワッと付け加えた仕様は、「やはり前開きで着脱しやすいものにしたい」ということ。前を閉じる仕様(ボタンとかファスナーとか紐とか)に関しては何も考えずに、上記セーターの真ん中に切れ目があるのをイメージして編んでいくことにした。図面上では輪編みか平編みか買えるだけで実現できそう。実際やってみると輪編みと平編み時の力加減の差の問題はあるけれども、今回は練習なのでそのへんは不問としたい。
上記をモタモタ進めた後、やっと実作業に入るのだった。
ヨーク部分
作業期間4日くらい。ここがウェア的なものとしては一番ポイントになるが、なにせ形が単純なので、編んでいる間は不安しかなかった。計算通りに作ってはいるものの、なかなか着るものっぽく見えてこない。
(サイズ的にはなんとかなっているものの何だか穴が空いて変だなぁと思っていたら、そもそも増し目の手順が間違っていることに、作業が完全に終わった数日後気がついた。全部間違えてたらそれもまたデザインだと思え…るのだろうか)
やっぱりどう見ても謎の構造物。
胴体~袖
作業期間約7日(胴)、3.5日(袖)。その他、袖と身頃の配分がわからなくなって作業開始前に半日ぐらい悩んだ。
身頃が伸びてくると俄然着るものっぽくなってきてテンションが上がる。もはや自分は3Dプリンターにでもなったかのようだった。呪いにかかったように編み続けた。BGMとして借りてきたDVDの視聴も猛烈にはかどる。
袖は袖で一段あたりの目の数が少ないからとても速かったのだけど、遠目で見てもひと目のつまり具合が違っちゃってるので、次回以降なんとかしないといかん。単に体を包むだけなら気にならないのだけど。
以下、進捗をメモしていた画像。
仕上げ
何も考えずに真ん中を切っただけなので、ゴム編みを編み足してボタンを付ける感じではなくなっていた。そのまま端をクルクルさせて着ることも考えたが、せっかくの練習機会だし、防寒具の前が閉まらないと寒さに対抗できないだろうという思いもあり、ファスナーを買ってきて縫い付けてみた。勝手がわからずかなり適当につけたが意外と楽しい作業だった。
ここで完成とする!やった!
感想や反省
色々大雑把すぎるけれど、とにかく完成までこぎつけたことに感激した。かつてなく強い達成感。私にとっては大冒険だった。
編み図の理解とサイズ調整に時間をかけてから製作に臨んだことで、足りていなかったのは「パターンを脳内で立体的に理解する」ことだったのだなと気づく。立体としてのおおまかな形状と、一般的な編み図が知らせたかったポイントがちょっと理解できたことによって、今後普通の編み図とも、もう少し向き合っていけるだろう。
袖を編み出す作業、休ませている目と胴体部分から編み足すわけで、編み上げた身頃が邪魔でやりづらかった。伸びてくるとそうでもなくなるのだが。また作業中のメモにもあったが、部分ごとに編み目の大きさを合わせる努力が必要だろう。マジックループ等、身頃で使っていた針を使う方法も検討する必要がある。
トップダウンは達成感が得やすくてとてもよい方法だけど、きっちりしっかり丈夫なものなどを作るなら平たくパーツを編んで組み合わせる方が目も安定するし綺麗なのかもしれない…と思った。もう少し狙ったものが作れるようになったら挑戦したい。
編み物中、特にメリヤス部分は本当に単純作業なので、ラジオを聴いたり借りてきたDVDなど流しつつ時間を過ごした。物語はもういっぱいじゃなかったのか。矛盾。
次回作に向けて
トップダウン方式が気になる…そしてもう一回分くらい毛糸が残っている…。そこで『セットインスリーブみたいなトップダウンのセーター』という本を購入、こちらに挑戦してみたい。実は一度着手したのだがそもそもねじり増し目のやりかたが間違っていることに何段かしてやっと気がついたため、ほどいて気持ちを落ち着けつつこのレポートを書いているところ。